敷島の

15時、八K島からの帰路、東京港トンネルに差しかかったとたん、視界ぼやける。ただ「ぼやける」といっても、その「程度」が問題なのであるが、言うなれば、標識の文字や数字、前を走る車の赤いテールランプ、トンネル内上部両側、オレンジ色の光などが滲んで、なおかつ二重に見える。泣いているわけではない。近視・乱視の人々の裸眼の状態とでもいおうか、しかし、もとより私は視力がよいほうなので、その状態を想像しにくく、うまく説明できないが、泥酔状態において、こういうことはままある。とにかく、こちらは時速約百キロで走行中なのであり、危険なことこのうえない。明るい所から急に暗い所へ入ったせいかとも思ったが、そうではない。というのも、私はこのトンネルを、少なくとも週に一度は走行しているのであり、これまでにそんなことは一度もなかったからである。では何であるか。これはもしや、陽炎ではないか。本日、東京の最高気温17℃、「陽炎」は春の季語である、それにしても車内の計器類、伝票の文字、ハンドルを握る自分の手までぼやけて見えるのは何ゆえか、あっ、花粉症かもしれぬ、いや、まあこの歳だ、ただの「老眼」という可能性もあろう。老眼投げ、老眼大統領、老眼フリーマン・・・・・・。などと考えているうちに、どうにかトンネルを抜けた私は、あることに気づいて戦慄する。それは、トンネル内を走行していた時よりも、さらに見えなくなっていたからである。

17時帰社、いくらか視力回復。積載よして帰宅、ネットで検索「白内障」――帰り際、少し眼のことを話した同僚に言われた「白内障じゃないの?」が気になっていたからである――。まったく脅かしやがる。そこまで酷くねえよ。たぶん。

夜、肩や腕を、普段あまりぶつけない所にぶつける。チンピラかおれは。家人「飲み過ぎだろ」。まあ、そう言われちゃうと、そうなのかもしれませんが。生姜焼き、白菜漬、米飯などを食う。後、珈琲、チョコレート。陰鬱。

深更、ウイスキー、視力弱い人の気持ちがわかる。酒の酔い方が違う。これはおもしろい。でもあれだな、この症状、ただの視力低下だとしても、眼鏡をかけるのはいやだなあ。絶対に似合わないと思うから。それならいっそ、何も見えなくなったほうが・・・・・・。何にしても、まあ、放蕩の限りを尽くした罰が当たったのでしょう。

男が死んで行く時に.wma 直