アナル・ナ・アナタ

朝出発、宿酔。日中は真夏の陽気。煮られているようである。子供のころから私は、煮物にだけはなりたくないと思って今まで生きてきたので、「煮るな。煮るな私を。やめろよ・・・・・・」と言いたくもなり、いや実際、言ったね。完全に煮えてしまってからでは手遅れということもあるのだからね。人生には。17時過ぎに帰宅して水浴行為にふける。シャワー付き携帯電話というものがもしあったとしても興味はあるが欲しくはない。だって、お高いんでしょう?

夜、麦酒と梅酒を飲む。後、冷し中華を食って自室にゆき仮眠30分。社長の娘らしき女とヤってる夢をみる。「らしき」というのは、娘は私と同じ職場で事務員として働いているから、顔見知りなのである。夢のなかで私は、その女を背後からヤっていたので、それが本当に社長の娘だったのかどうかは判然とせず、そうと断言できぬゆえの「らしき」なのである。しかし夢のなかでは「社長の娘とヤってる」という確かな手ごたえ、感触、つまり「意識」があったのは事実である。ところが、目が覚めてみると、しだいに自分の記憶が疑わしく思えてくるのが不思議である。それはやはり、実際に顔を見なかったことと何か関係があるのだろうか。そして、私がヤった女はいったい誰なのか。それより、あれは本当に女だったか、男だったんじゃないだろうか――。

正しくは「オールド・ファッションド・グラス」と呼ぶらしい、俗にいう「ロックグラス」に焼酎をどぼどぼ注ぎ入れ、そこにレモン汁をピッピと振っただけの、謹製お粗末ドリンクを飲みつつ書きもの。明日も暑いらしいが、今はそんなことどうだっていい。四年前の今日、私は浅草にいた。その日は朝から、ホテルの部屋で缶ビールを飲んでいたが、緊張のせいか、いくら飲んでも酔うことはなく気もそぞろ。缶ビール片手に部屋のなかを歩きまわり、ふっと、窓辺に立って浅草寺、公園六区界隈や、花やしきなどを見おろして、ただ所在なく意気地なく、出番が来るのを待っていた。のであった――。