嘘も方便

去年の夏、あれは7月だったと思う。私は左肩を痛め、といっても怪我や病気などではなく、突然、原因不明の激痛に襲われ、その肩ばかりか腕や手も上がらず、ものを持つことすら出来なくなり、一週間ほど仕事を休んだことがあった。医者に診せると「五十肩」と診断され、苦笑するしかなかったのを憶えている。そして今朝、目を覚ますと、その症状がまた私の左肩に表れたのである。激痛である。

ということにして職場に架電。つまり仮病を使い、休みをもらったのである。しかし、具合よろしくないのは事実なのである。信じてほしい。「宿酔レベル5」これは最高値であり、かつ、なかなか出ない数値でもある。自分でも驚いた。信じられなかった。でも信じてほしい。ぐったりしている状態で台所へ行き、烏龍茶をG飲。ぼんやり煙草を喫みながら、自らのダメさ加減にうんざりしたのも束の間であった。なぜなら、昨夜の私は妙に元気で、ものを書いたり、調べたり、「村人1」を演じてみたりと、酔いのせいもあるのだろうが、楽しくてしようがなくなり、気がつきゃ5時半、就寝6時。私は普段、7時半に起きるのである。ね?起きられるわけないだろ。そういう訳である。後、再眠。

昼頃に起き、カップ焼きそばを食う。後、夕刻まで書見。17時、上官に架電、もう一日休みをもらう。というのも、肩を痛めて休んでいる、ということになっているのに、また、彼らはそれを信じているのだから、明日、私が元気な姿で「オハヨウゴザイマース」などと出社すれば、仮病怪しまれること火を見るよりも明らか、なのであり、つまり一日で急に良くなるはずはないのであって、これは私の嘘に真実味を加えるためである。「優しさ」と言うこともできよう。しかし私は電話を切ったあと、薄暗い部屋で缶ビールを開け、飲みつつ後悔、「あゝ、こんなことならAさんや月曜休みのタクミンと飲みに行く約束をしておけばよかったなあ」と。へへっ。

夜、黒胡椒せんべい、焼酎。帰宅した家人の質疑に「村人1」で応答。まだ私の役作りが未熟だったのか、家人を怒らせる。どうも「ふざけている」ようにしか見えなかったらしい。仕事をしない人は、ふざけてはいけないのだろうか。というか、真面目に演じたつもりだったのだが。後、田舎うどん。麺が太けりゃそれだけで「田舎風」なのか?どうも納得できないなあ。深更、ウイスキー、書見。膝がすりむけていて少し痛いけど、なぜかそれが、とても心地よい。