死神は、リンゴしか食べない

19時、北千住でAさんと会う。飲酒対談をするためである。少し歩きましょう、ということになり、繁華街の、裏道、抜け道、獣道を歩く。まるで二匹の野良猫のようであった。いや、野良猫は私だけか・・・・・・。そして入った一軒の店。酒、料理、雰囲気、どれも素晴らしい。特に、厨房で調理する、俳優の麿赤兒氏に似た(といってももっと若いが)この店の主と覚しき男の、仕事ぶりと表情がとても良い。そのことをAさんに話そうとすると、Aさんも同じことを思っていたとのこと。Y豆腐、新生姜の天婦羅などを肴に清酒を飲む。かなり酔っ払う。五合くらい飲んだかしら。

店を出てAさん宅に向かう。途次、スーパーに寄り、麦酒、リンゴ、梅干などを買う。どういうわけか「なめこ」も買う。Aさん宅にてウオツカを飲みつつ対談。この時のために、美術、文芸方面の知識を勉強してきたつもりだったが、やはりAさんの教養の深さにはかなわず、とうとう「おれは麦酒の注ぎ方が上手いんだよ、麦酒の味は、注ぎ方で決まる!」などと、美術とも文芸とも何の関係もないことを自慢、実演してみせる始末。だがこの麦酒が、めっぽう美味く、自分でもちょっと驚いた。後、バカバカしい話を続けつつも、分厚い美術書や、Aさんが書いた原稿などを読ませてもらう。そして、買ってきたリンゴを食いながら、前回同様、美味なる茶を何杯もごちそうになる、良夜かな。