暴露町のオナニスト4

幸いなことに、その時の私は酒を飲んでいなかった。がしかし、心中でむらむらと湧きあがる例の欲求が、私を動かそうとしていた。私はかの、いまいましき“買物リスト”をくしゃくしゃに丸めて短パンのポケットにつっこみ、代わりに取り出した携帯電話の電源を切ると、家人への意趣返しも兼ねて(私がなかなか戻らないことを心配させるため)、たっぷり小一時間かけて店内を一渡り見てまわった。いや、4周半ぐらいしただろうか。そしてようやく鶏卵1パックと、菓子売り場で「とんがりコーン」を手に取り、すでに他の商品で一杯の買物カゴにそれらを入れた。いや「乗せた」というべきか。――会計を済ませ外に出ると、じつに満ち足りた気分。この時ばかりは「買物をしまくって日頃のストレスを発散する」という女性の気持ちが、少しく解ったような気がしたのであった。