往復

家人が広島に行ってから二箇月が過ぎた。その間、特に変わったことはないが、近頃はいよいよ寒さがつのり、なかなかに寂しい日々を送らせてもらっている。しかしまあ、広島に着いて三日も経てぬうちに入院することとなった家人の不自由さや心細さを思えば、こちらは自由の身、好き勝手やって、その上さらに金がねえとか、才能がねえとか、隣人の生活音がうるせえとか何とか云って悩んじゃって、挙句の果てに「寂しい」などとぬかしていては、家人に申し訳が立たぬというものである。だからと云って生活態度を改め、好色家の名も返上し大人しくしているかというと、それがどうにも、うまくいかないようで――。