斉藤さんの・・・・・・旦那さん?

正午前、広島空港に到着。


バスに乗って宿の近くまでゆき、広島風お好み焼を食わない。なぜなら緊張していてそれどころではないからだ。原爆ドーム周辺を散策(徘徊)したるのち、喫茶店に入り生ビール2杯とサンドイッチ。朝、羽田空港内のカフェーで注文したものとまったく同じだったことに気づいて苦笑す。「落ち着け」。後、宿にチェックインして部屋で行李を下ろし、家人入院中の病院へ向かう。


二箇月ぶりに対面した家人、えらいことになっている。何が?って腹が。地球儀めいたその腹が。移動は車椅子と聞いていたが、それも頷ける。8階に食堂があるのでそこに行こう、と家人。それは構わぬけれども家人は点滴中、どうしていいのか分からない。要領を教えてもらい、家人を車椅子に座らせ、私がそれを押して部屋を出る――。家人の後頭部に目を落としつつ車椅子を押している時のあの気持ちは、何とも云いようのない、じつに切ないものであった。






夕刻、家人とともに、翌日に行われる手術の説明を三人の医師より受ける。麻酔科、小児科、産科(執刀・主治医)の三人である。実際には十数名のスタッフが立ち会うとのこと。私は今回の手術を、盲腸の手術程度と見做していたが、そんなもんじゃないらしい。訊くと双子の帝王切開手術の場合、スタッフもまた各科より二名以上の人数でそれにあたるのだという。そんな説明を聞けば聞くほど、私が手術を受けるわけじゃないのに、根が小心に出来てるせいか、いよいよ怖くなってくる。さすがの家人も、かなり緊張しているようであった。