Echoes (part 1)


正午過ぎに起きて先ず一服。10月の増税を機に、お煙草をおやめになった御仁も少なからずいたようで、私も各所より禁煙、と云うか“卒煙”を促される場面もあったが、「子供も生れることだし、禁煙してみたらどうかね。煙草銭だってバカにならないぞ。やめて、それで浮いたお金で赤ちゃんのオムツやミルクでも買ってやったほうがよっぽど、それに――」などと、かなり具体的な金の使い途まで指導する、おせっかいも甚だしい人たちの話を、煙草をやめる気なぞ毛頭ない私は、お決まりの苦笑うかべつつ聞き流してゐたものである。


ところが一と月もすると、煙草の値上がりは思いの外わが懐を寒からしめる雲行きとなりて、恥ずかしい話“節煙”なぞ試みてみたりもした。つまり日に喫む煙草の本数を減らして、値上がりした分を相殺しようという殊勝な、いや、さもしい考えからのことである。が、最早ヘビースモーカーに出来上がってしまっている私にとってそれは“難行苦行”以外の何物でもなく、三日と保たなかった。そして、節煙や禁煙なぞ私には土台無理な話であると云うことを、改めて思い知らされるのであった。